第11回中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2021 in Mitaka

公開日 2022年03月16日

 

大会レポート

集合写真

開会式

昨年に続き、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策のため、オンラインでの開催となった今大会。主催者を代表して井上浩実行委員長より、「11回目となる本大会は、昨年に続きオンライン開催となり、私も島根から参加しています。97作品の応募にも感謝しています。その中から選ばれたみなさん、おめでとうございます。これは、素晴らしい結果です。発表前で緊張していると思いますが、ワクワクだけを残してください」と、今日一日が貴重な経験になる旨の開会挨拶がありました。実行委員長の挨拶に続き、来賓の方々から寄せられた祝辞の代読があり、経済産業省、総務省、文部科学省からの祝辞が読み上げられました。
続いての審査員紹介では、まつもとゆきひろ審査委員長を始め審査員一人ひとりに画面に登場いただき、オンラインならではの表情が良く分かる審査員紹介となりました。まつもと審査委員長からは、「今年も素晴らしい作品の応募があったことに感謝しています。先輩から後輩に引き継がれている作品も多く、頼もしく思っています」と、最終審査会発表者とのやりとりに期待を込めた挨拶がありました。審査員に続き、スポンサー賞を提供してくださった企業5社の方々も紹介、発表者にエールをいただきました。
最後に、最終審査会に出場する発表者が出場順に紹介。発表者のみなさんも、それぞれ地元からのリモートでの参加で、名前を読み上げられるとそれぞれ画面上でポーズを決めてくれました。

開会式

 

最後に、最終審査会に出場する発表者が紹介されました。発表者のみなさんは、それぞれ地元からのリモートでの参加で、名前を読み上げられるとそれぞれポーズを決めてくれました。

 

応募者によるプレゼンテーション

ゲーム部門


最優秀賞
作品名「TITLY」
山岡愛咲さん(島根県)

TITLY  

ゲーム部門で、見事、最優秀賞に輝いたのは、島根県の島根県立出雲商業高校2年生の山岡愛咲(やまおかあさき)さんです。
山岡さんのゲーム「TITLY(タイトリー)」は、カーソルを動かし、接触しないように障害物を避けながらコースを通過していく「イライラ棒」に似たゲームです。プログラミングを組む上で使用する色を4色に絞り込むなど、山岡さんなりの工夫で、シンプルで分かりやすいゲームを作り上げていました。
「良く出来ていた。シンプルなゲームを、きちんと作られている。プログラミングにも同じアルゴリズムを使っていて、良くまとまっている点が高く評価された作品」と、審査員のコメント。また、汎用性が高い点も評価されました。
山岡さんからは、「今回、ゲーム作りは初めての挑戦でしたが、一番上の賞がもらえて嬉しいです。本当にありがとうございます」と、素直な受賞の喜びの声がありました。そして、「友達にタイトルのアイデアを出してもらったので、良い報告ができます。他の発表者の作品には、自分にない発想があって刺激になりました。これからもゲーム製作をしていきたいです」と、今後に向けての想いを語ってくれました。



優秀賞、ソニックガーデン賞、Wantedly賞
滝沢二中 科学技術部チーム「IWATE」さん(岩手県)
作品名「Memento mori」

Memento mori  

チーム「IWATE」のリーダー兼プログラマーの飛鳥ソニア(あすかそにあ)さんは、前年度の優秀賞受賞者で岩手県滝沢市立滝沢第二中学校の2年生。今回はグラフック担当の1年生、遠藤穂花(えんどうほのか)さん、柳村祐羽(やなぎむらゆう)さんの2名とチームを組んでの参加となり、優秀賞の他、スポンサー賞のソニックガーデン賞とWantedly賞のトリプル受賞となりました。作品名は、「Memento mori(めめんともり)」。多くの作品のモチーフにもなっているラテン語の言葉で、「死を忘れる事なかれ」という意味とのこと。10年前の東日本大震災から大きく人口の変化があった岩手県。その岩手全体をゲームのフィールドにして、ルーレットの出た数に従って地図上を移動して目的地を目指すゲームです。プログラミングを担当した飛鳥さんは、「名産品の紹介やクイズなどで、岩手の魅力を知ってもらえればという思いで作りました」と教えてくれました。
「ゲーム内のマップが実際の地図と合わせてあるので、座標を落とし込むのは大変だったのでは?」という審査員の質問に、グラフィック担当の遠藤さんと柳村さんは、「大きな模造紙を広げ、駅の場所を描き写して作りました」と制作時の苦労を語ってくれました。
Wantedly株式会社の新谷哲平(しんたにてっぺい)さんからは、「コードを抽象化する力と実装する力を持っている」と評価のコメント。
さらに、株式会社ソニックガーデンの伊藤淳一(いとうじゅんいち)さんからは、「プログラミングを楽しんで、大人になっても続けていてほしい。将来が楽しみ」とお話しされました。
審査員からは、「岩手への郷土愛がよく表れたゲームで、マップ・キャラクターも自分たちで作って工夫されていた。これからも地元のために活躍してほしい」との講評がありました。
昨年に続き、見事「優秀賞」を獲得された飛鳥さんは、「プログラミングの前に数学の勉強をしなければ」と言いながら、「いずれ東北版も作ってみたい」と、夢を語ってくれました。



審査員特別賞、ピクシブ賞
滝沢二中 科学技術部チーム「鰤が素振り」さん(岩手県)
作品名「芋がポテッと落ちたんじゃが」

芋がポテッと落ちたんじゃが   

岩手県滝沢市立滝沢第二中学校科学技術部3年生、佐々木空(ささきそら)さん、吉田琥太郎(よしだこたろう)さん、伊藤祟和(いとうしゅうわ)さん3人のチーム「鰤が素振り」の、作品名は「芋がポテッと落ちたんじゃが」です。チーム名といい、作品名といい、誰もが聞いて笑顔になってしまう。とにかく“ダジャレ”にこだわっている3人です。アクションやシューティングなど異なる種類のミニゲームを3つ遊ぶことができるゲームです。ゲームのスタッフロールには“ダジャレ”の提供者である、「3年生の皆さん」「先生たち」の記載があり、“ダジャレ”をどのくらい集めたのかという質問に、「172個かき集めました。ゲームに使用したのは70個です」との答えでした。
ピクシブ株式会社の道井俊介(みちいしゅんすけ)さんは、「全体を通してアニメーションの作り込みがされている点、チーム名も作品名も一貫して“ダジャレ”が効いている点、プログラミングをグループで行った点」の3つを評価しました」とのことで、見事ピクシブ賞も授与されました。
チームの3人は、「3人で団結してここまで出来て良かった」と、チーム一丸となってゲーム作りを完成させた喜びの声をあげました。



審査員特別賞、エルソウル賞、パーソルプロセス&テクノロジー賞
玉井由大さん(島根県)
作品名「出商喫茶」

出商喫茶 
   

島根県の島根県立出雲商業高等学校2年生の玉井由大(たまいゆうだい)さんの作品「出商喫茶(いずしょうきっさ)」は、出雲商業高校の実習イベントである「出商デパート」を題材にしたもので、制限時間内にお客さんに食べ物を届ける配膳ゲームです。細かい設定の複雑なゲームですが、店長のモデルが担任の先生だったり、配膳が遅いと売上がマイナス300円になってしまったりと、玉井さんなりのユニークな設定を盛り込んだ作品です。最優秀賞の受賞には至らなかったものの、複雑なゲームを作りなどが高く評価され、スポンサー賞のエルソウル賞とパーソルプロセス&テクノロジー賞の2つを受賞しました。
エルソウル株式会社の川崎文武(かわさきふみたけ)さんは、ゲームの難易度、ゲームのクオリティの高さ、の2点を高く評価されたそうです。パーソルプロセス&テクノロジーの奥富南帆(おくとみなほ)さんは、「ゲームのクオリティが高く、テーブルの設定、日差しの表現などに細かいこだわりがある」と評価し、「これからもユーザー目線で作って行ってほしい」とアドバイスを送りました。
 玉井さんは「Rubyのおかげでプログラミングも理解できた。他の大会にも出してみたい」と自信を深めている様子。「課題は、地元愛が足りなかったこと。配膳する商品に“出雲そば”を入れなかったことが残念でした。でも、モデルになってくれた担任の先生に良い報告が出来ます」と反省点もふまえて語ってくれました。これからの活躍も楽しみにしています。



審査員特別賞
松浦天斗さん(愛媛県)
作品名「タイプスゴロク」

タイプスゴロク 

今回で3回目の出場となる松浦天斗(まつうらたかと)さんは、愛媛県の愛媛県立松山工業高等学校メカトロ部の3年生です。
作品は、タイピングが苦手な人や初心者の人でもスゴロクが組み合わさっていることにより、楽しくゲームをしているうちにタイピングの練習ができ、上達してしまうというゲームで、入力が正しいと次へ進むことができます。このゲームを作ろうと思ったきっかけは、「タイピングは小学校の間でも取り組んでいる学校が増えているようなので、ぜひとも配布してほしいと思った」そうで、「メインターゲットはパソコン初心者」とのこと。
「タイピングは技術だが、スゴロクと組み合わせたことで達成感が味わえ、ゲームとして成立している点が面白いと思った」との審査員の評価でした。
松浦さんは、「スゴロクは早くに出来ていたが、タイピングのプログラミングは1年かけたので、最終選考まで残れて良かったです。今後は、ゲーム成績のランキングが表示されるなどで改善していきたい」と「タイプスゴロク」の改善への意欲を語ってくれました。

 



審査員特別賞
村上美乃里さん(愛媛県)
作品名「睡眠冒険」

睡眠冒険 
   

審査員特別賞を受賞した村上美乃里(むらかみみのり)さんは、愛媛県の愛媛県立松山工業高等学校メカトロ部の2年生です。
村上さんの「睡眠冒険」は、棒人間を動かしてミニゲームをクリアし、最後に気持ちよく寝かせてあげるゲーム。ゲームが苦手な人でも楽しんでもらえるよう、様々なミニゲームが楽しめます。
審査員は、「6個のミニゲームのルールはどれも身近なもので、ゲームのグラフィックもとても親しみやすい」と評価。「シーンが2つに別れているミニゲームをまとめているところを評価しました」との審査員のコメントもありました。
村上さんは、「初参加でここまで来られて嬉しい。来年もっと上の賞を目指して頑張ります。」と、次回への意気込みを語ってくれました。

 



審査員特別賞
藤枝侑瑞樹さん(愛媛県)
作品名「Escape from Space」

Escape from Space 

審査員特別賞を受賞した藤枝侑瑞樹(ふじえだゆずき)さんは、愛媛県の愛媛県立松山工業高等学校1年生です。
作品「Escape from Space」は、弾幕を回避しながらスタート地点からゴールまで移動する弾幕系ゲームです。マップの構成などからも、一見して難しそうなゲームですが、審査員は「スピード感のある良いゲーム。難易度が高く一番やってみたいゲームだった。はまってしまいそう」と評価。そして、審査員の多くが驚いたのがプログラミングの量の多さで、「10,000行を手で書いた」という藤枝さんに対し、「2,000行くらいにまとめることを目指そう」との審査員からのアドバイスもありました。
また、「ゲームの難易度の調整ができると良い」との審査員のアドバイスに、「難易度が高く、ゲームを試してもらった友達がゴールまで全然行けなかった」と、制作時のエピソードを語ってくれました。
最後に藤枝さんより、「初参加で結果が出せた。次回はプログラミングの精度を上げて、無駄の少ないプログラミングが書けるよう工夫し、今後も挑戦したい」と、次回への抱負を語ってくれました。


 

   

【クリエイティブ部門奨励賞】
一次審査通過には至らないものの、当コンテスト委員会からクリエイティブ部門に応募された山田直生(やまだなおき)さんの作品に、今後の活躍が期待できるとして奨励賞が送られました。

 


 

【講評】

まつもとゆきひろ審査委員長

まつもと審査委員長

今大会の全体講評が、まつもと審査委員長より行われました。作品については、「どれも出来が良く楽しませてもらった。ゲームが得意ではない人に楽しんでもらうことや、郷土愛などのこだわりを持って作られた作品が多かったのを嬉しく思っている」と、おっしゃってくださいました。
「大人も子どももゲームをする時代、99%の人が、他の人が作ったゲームで遊んでいる。しかし、みなさんはゲームを作る側に来られた。条件を与えることで、実際に体感することができる。これからもプログラミングによって、コンピューターの力を具現化していってほしい。みなさんのどの作品も、成果は素晴らしく、これから花開いていくと思うので、ぜひ、チャレンジを続けていってください」と、これからに期待を込められた講評となりました。


閉会式

副実行委員長で株式会社まちづくり三鷹 代表取締役社長の吉田純夫より閉会の挨拶があり、応募者をはじめ、協賛いただいた企業、運営に携わった実行委員へ感謝の意を表し、二度目のオンライン開催となった第11回目のプログラミングコンテストは無事に閉会しました。


文:山田 浩之(株式会社ヴィブラント)