第10回中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2020 in Mitaka

公開日 2021年04月30日

 

大会レポート

開会式

新型コロナウイルス感染症の感染予防対策のため、参加者と審査員をWeb会議ツールでつないだ新しい形式での開催となった今大会。主催者を代表して、井上 浩実行委員長より、オンライン開催となった経緯説明などと共に開会の挨拶がありました。実行委員長の挨拶に続き、例年の来賓挨拶に代わって、経済産業省商務情報政策局 情報技術利用促進課 様、総務省 情報活用支援室 様、文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課情報教育振興室 様からの祝辞が読み上げられました。

続いての審査員紹介では、まつもとゆきひろ審査委員長を始め審査員一人ひとり画面に登場いただき、審査員の顔が良く分かる審査員紹介となりました。まつもと審査委員長は、「私の作ったRubyを使って、みなさんが頑張ってくださったことに感謝しています。素敵な作品が多かったので、みなさんと今日対話できることを楽しみにしています」と、最終審査会に臨む参加者とのオンラインでのやりとりに期待を込めた挨拶をされました。

集合写真

 

最後に、最終審査会に出場する発表者が紹介されました。発表者のみなさんは、それぞれ地元からのリモートでの参加で、名前を読み上げられるとそれぞれポーズを決めてくれました。

 

応募者によるプレゼンテーション

ゲーム部門


最優秀賞
松江高専の人(島根県)
石原 爽さん、山本 崇人さん
作品名「Spell Out」

最優秀賞 石原 爽さん、山本 崇人さん Spell Out

ゲーム部門で見事、最優秀賞に輝いたのは、島根県の石原 爽(そう)さんと、山本 崇人(たつと)さんです。

今回、二人が作ったのは、マウスを使った新感覚のシューティングアクションゲームです。攻撃が2段階になっていて、1つ目は連射ができる軽い射撃で、2つ目は右クリック長押しでチャージして発動するスキルとなっています。それぞれの攻撃は属性を変更することができ、敵との相性により切り替えて戦います。

「Spell Out」を作る上で、「Rubyは書きやすかったですが、作品に使うことができたライブラリーの機能が少なかったので苦労しました」という松江高専の人の2人。ソースコードを自分たちでしっかり書き、プログラミングをしていったそうです。

「ゲームはシンプルだが独創的だったこと。ソースコードを読み込み、自分たちでしっかり機能をプログラミングしている点が高く評価された作品」と、野田審査員。ご自身が教壇に立っている島根県から応募の2人が、最優秀賞を受賞したことにたいへん喜んでいらっしゃいました。

「プログラミングは自分1人でやるだけでなく、友達とやったりするのも楽しいので、ソースコードをお互い見せ合ったり、レビューし合ったりしてみてください。そうすれば、もっと良いプログラミングができると思います。またコロナ禍でもあるので、インターネットでGitHubなどにソースコードをあげて、他の人からレビューをもらうのも良いと思います」というアドバイスも送られていました。

石原さんは、「今回初めての出場で、Rubyも高専に入ってから学び始めたので、この結果に驚きを隠せないのですが、ほんとうにありがとうございます」と、喜びを表現されました。山本さんは、「Rubyに触れる機会が減っていた時期もあったのですが、今回のゲーム制作では石原さんに助けてもらいながら作ることができました。これからもGitHubや色々なものを使いながら、ゲームの開発を進めていきたいと思います。ありがとうございます」と、素直な受賞の感想を語ってくれました。



優秀賞
滝二中 科学技術部チーム「Sweets」(岩手県)
飛鳥 ソニアさん
作品名「Sweets Rush(スイーツ・ラッシュ)」

飛鳥 ソニアさん Sweets Rush(スイーツ・ラッシュ) 

優秀賞に輝いたのは、岩手県の滝沢第二中学校、科学技術部チームSweets(スイーツ)。発表者は中学2年生、飛鳥 ソニアさんです。

誰もが一度は夢見るお菓子の世界を駆け巡るレースゲーム。このゲームは上から下に向かって操作します。コース内に置いてある障害物のお菓子やスイーツには当たらないように操作し、対戦相手より先にゴールを目指します。

「プログラミングを作る中で、三角関数などを活用して、工夫しながらコードを書いたり、プロダクトを作ったりしていったことは、これからの大きなスキルになっていくと思います。今後もぜひ、楽しみながらコードを書いていってもらえたら嬉しいです」と、山内審査員。

本コンテストで、見事「優秀賞」を獲得された飛鳥さんは、「今回初出場で、プログラミングも学び始めたばかりなのですが、このような賞をいただくことができありがとうございました。今後もプログラミングを学びながら、より良いものが作れたらいいなと思っています」と、感想を述べられました。



審査員特別賞
磯谷 桂さん(東京都)
作品名「占領戦」

磯谷 桂さん(東京都) 占領戦  

審査員特別賞に輝いた東京都の磯谷 桂さんは、なんと小学6年生でのファイナリスト入りです。

磯谷さんの作品「占領戦」は、ストラテジーゲームの一種です。最初に、所持金で兵士や戦車を購入します。次に、購入した兵士や戦車を配置して、ゲームスタート。対戦して、最終的に多くの陣地を取った方が勝ちとなるゲームです。

「ゲームとして1つのまとまったものを作るというのは、得がたい経験になったと思います。そこに反省点も出てくる。ただ、作ったからこそ見えてくるものもあるので、今後も頑張ってほしい」と、高橋審査員。今回は、惜しくも審査員特別賞となりましたが、実は「優秀賞」争いの候補にもあがっていたことが明かされました。

磯谷さんは、「今後、このゲームを発展させたり、よりクオリティの高いものを作ったりしていきたい」と、喜びの声をあげました。



審査員特別賞
林 晃太郎さん(愛媛県)
作品名「Mind Board」

林 晃太郎さん(愛媛県) Mind Board
   

第8回大会に初めての応募で見事ファイナリストとなった林 晃太郎さんも高校3年生です。この作品は一見すると普通のオセロゲームですが、罠を設置することができます。もし相手が罠にかかれば石をひっくり返すことが出来ずに、相手が石を置こうとした場所が自分の色になります。相手には罠の置いた場所の情報を伝える必要がありますが、その情報は嘘でも本当でも構いません。相手の心理を読み取ってうまく罠にはめることが勝利の鍵になります。

もともとオセロゲームを作るつもりだったものが、新機能を付け加えていくうちに別のゲームになったと林さん。「自分が楽しめないゲームは他人も楽しめないので、自分が楽しめる新機能、アイデアをどんどん付けていくというのは良いと思う。今回、ローカルでしか動かなかったといっていたが、ソースコードを見ると、何かひとつ突破口が見つかれば、通信でも対戦できそう。もっともっと発展させていってほしい作品」と、田中審査員。

林さんは、「1年生の時から出場して今年で3年目、3年連続の審査員特別賞で終わりました。残念ながら上位賞は受賞できなかったけれど、今年はみんなレベルが高く、この場にいられたことが嬉しいです。そしてそれが、自分が将来プログラミングを続けて行く自信に繋がりました。今後、みんなに追いつけるように精進して行きたいです」と、晴れやかな表情を見せていました。



審査員特別賞
畠山 響さん(岩手県)
作品名「将棋でGo」

畠山 響さん(岩手県) 将棋でGo

中学2年生コンビで第8回大会のファイナリストとなり、昨年の第9回大会では最優秀賞を受賞した畠山 響さんも、高校生となりました。

「将棋でGo」は、将棋の駒を動かして得点を稼いでゴールを目指すゲームです。 通常の将棋とは異なって障害物があったり、自分の駒は一つなのに対して、敵の駒は複数あったりと戦略的な動き方が必要となります。

「将棋の駒を使ったゲームなのに将棋ではないという発想が面白く、尚かつ将棋の駒の特性をよく活かした色々と面白いゲーム。敵の動きなども良くプログラムされていて良い作品でした」と森審査員。

畠山さんは、「連覇は逃してしまいましたが、来年はこのゲームを大幅に改良して、リベンジを狙いたいと思います」と、次回への意気込みを語ってくれました。

 



審査員特別賞
松浦 天斗さん(愛媛県)
作品名「LABYRINTH」

松浦 天斗さん(愛媛県) LABYRINTH
   

審査員特別賞を受賞した松浦 天斗(たかと)さんは、愛媛県の愛媛県立松山工業高等学校2年生です。

ステージ内に散らばっているアイテムを敵につかまらないように集めるゲームです。敵に当たってしまうとゲームオーバーになりますが、コンティニューすることもできます。ステージはプレイヤー視点の3Dで表現されており、画面の隅には自身の周囲を見下ろす2Dのマップも用意されています。

「これまでの2次元の作品から、今回の応募作では3D描写に挑戦されていて、自分を発展させ高めていこうという気持ちが感じられた。個人的にはBGMも良いなと思っていて、ゲーム全体のコンテンツを作っていく能力が高く、難しいプログラムにも挑戦していて素晴らしい作品でした。今後も挑戦していってほしいです」と、森審査員。

「前回2D作品で一次審査を通過できなかったので、前回の反省点を踏まえ3D作品に挑戦して、ここまで来られたことはとても嬉しいです。また、今回の評価で新たな改善点が見えてきたので、そこを直し、より良いものにしていけたらと思っています」と、松浦さんは語ってくれました。これからも難しいことに挑戦していってください。

 



審査員特別賞
滝沢第二中学校科学技術部 チーム部長(岩手県)
高杉 伊吹さん
作品名「影陣伝(えいじんでん)」

滝沢第二中学校科学技術部 チーム部長(岩手県) 高杉 伊吹さん 影陣伝(えいじんでん)

岩手県の滝沢第二中学校の科学技術部のチーム部長の発表者は、中学3年生の高杉 伊吹(いぶき)さんです。

プレイヤーを動かして、自分の陣地を増やしていく「和」をテーマにした陣取りゲームです。地形や、アイテムなどでプレイヤーに様々な効果が表れるので、それをうまく使うことがポイントになってきます。

「影陣伝」は陣取りゲームとしてたいへん伸びしろのある作品だと、笹田審査員。「2人のキャラクターを同時に扱えるようにするという技術的工夫もあり、プログラムも綺麗に整理されていて評価できる」と好評価を得ました。

「相手の邪魔ができるなど、今後もっと白熱したゲームにプログラムしていってほしい」という審査員からのコメントに対して、高杉さんは、「今回いただいたアドバイスを参考に、もっとプログラミングを頑張っていきたい」と語ってくれました。これからの活躍も楽しみにしています!


クリエイティブ部門

 
最優秀賞
Nucumo(東京都)
三橋 優希さん、野崎 智弘さん
作品名「Minory」

最優秀賞 Nucumo(東京都) 三橋 優希さん、野崎 智弘さん Minory
   

クリエイティブ部門で見事、最優秀賞に輝いたのはNucumo(ヌクモ)の2人。東京都の高校2年生の三橋 優希(みはし ゆうき)さんと、高校3年生の野崎 智弘(ともひろ)さんです。

Minoryは「今日のやったこと」を記録し、グループのメンバーと共有できるWebアプリです。記録を通して継続的なモチベーションのコントロールができるよう、記録しやすいデザインやグラフでの可視化機能などで支援します。テキストだけではなくページ数や時間も一緒に記録できるので、読書や勉強、運動などの記録にも使うことができます。

「今回のクリエイティブ部門は激戦で審査会ももめましたが、最終的にMinoryに決まりました。Minory は完成度も高く、Ruby on Railsの使いこなしも安定してコードを書いているという印象を受けました」と、高橋審査員。「身近な問題を解決したいというテーマ設定も分かりやすかったですし、コンセプトもまとまっていて、サービスとしてこのまま使えそうな完成度になっている」と、好評価でした。

「自分たち2人で作り上げてきた作品なので、みなさんに見ていただき、コメントをいただき、こうして評価していただいたことがすごく嬉しいです。今後、運用なども考えながら続けていきたいと思いました。ありがとうございます」と、三橋さん。「コロナ禍の中で、僕も何かできることはないかと考えMinoryを作ることができ、こういった場で発表でき、みなさんに見ていただけて良かったと思っています。今後もこういったサービスを作っていけたらいいなと思っています。ありがとうございます」と野崎さん。2人とも受賞の喜びを語ってくれました。

 



優秀賞、Classi賞  
何 櫟(へ り)さん(茨城県)
作品名「Bluetoothをつかった脳波の測定とリアルタイム表示や保存」
   
何 櫟(へ り)さん(茨城県) Bluetoothをつかった脳波の測定とリアルタイム表示や保存

優秀賞とClassi賞を受賞したのは、茨城県の何 櫟(へ り)さんです。
HC-06というBluetoothモジュールとMindflex脳波センサをつかって、無線の脳波測定及び表示やデータの保存をするソフトです。
「脳波の信号の処理を行うという内容で、学術的にも意義が有り、プログラミングの内容としても評価しています」と、田中審査員。「ハードウェアが絡む作品なので、ソフトウェアのようにここに間違いがあるとはすぐに分からないので苦労されたと思います。ハードウェアにはハードウェアの難しさ、ソフトウェアにはソフトウェアの難しさ、そのどちらも体験されたことが、今後の何 櫟さんの成長に繋がっていくのではないかと思いました。プログラミングの内容的な困難も克服された点を評価しています」と、好評価を得ました。
何櫟さんは、「今回のことを通して、色々な事を体験し、とても刺激的な時間を過ごすことができました。今後も、プログラミングを続けていきたいと思いました」と、感想を語ってくれました。
さらに、スポンサー賞であるClassi賞の受賞を聞き、「こんな光栄な賞をいただけると思っていなかったので、ありがたいです」と何 櫟さん。
Classi株式会社の永田さんからはClassi賞に選んだ理由に、「テーマ設定が難しいものでチャレンジングだったと思った点、始めにできなかったことを試行錯誤され克服された点、研究についても便利なものにしていきたいというどん欲な点」などを上げられました。また、「専門家の意見を聞いてもっとよくなっていくのではないかと思っています。Classiのコンセプトが「学びをエール」ということもあり、Classiは、今後の何 櫟さんの学びを応援していきたいと思いました」と、おっしゃってくださいました。


審査員特別賞、Matz(マッツ)賞
石川 愛海さん(千葉県)
作品名「My Design Memo」

 石川 愛海さん(千葉県) My Design Memo
   

審査員特別賞とMatz賞に選ばれたのは、千葉県の石川 愛海(あいみ)さん。Rubyを始めて1年あまりという石川さんは、見事、初の応募でファイナリストとなりました。「My Design Memo」はサイトをコメント付きでメモできるサイトです。ブックマークとは異なりコメント付きで保存できるので、そのサイトのどこが良かったのかなど、覚えておきたいポイントを忘れずに保存できます。サイトのプレビューも表示されるためサイトの雰囲気がひと目でわかります。
「My Design Memoのような感性に基づいたプロダクトを作るというのは、とても現代的で素晴らしいと思いました」と、森審査員。「使ってもらう人、友達やユーザーの意見を聞いて、改良していくというアプローチが大事。石川さんは、それを実際に体現されているのが良かったと思います。プロダクトの軸を大事にして、色々なことに挑戦してもらいたい」と、好評価を得ました。
「一次審査を通過しただけでも嬉しいのに、好評価をいただきとても嬉しく思っています。今後もRubyのプログラミングを続けて、もっと良い作品を応募できたらと思います」と、今後の本大会に対する意欲を語ってくれました。
さらに、Matz賞の受賞を聞き、「頭が真っ白です」とおっしゃりながらも、「クリエイティブ部門の他の2作品も素晴らしく刺激を受けたので、これからもプログラミングを頑張っていきたいと思いました」と笑顔で語られました。

 

 


 

【講評】

まつもとゆきひろ審査委員長

まつもとゆきひろ審査委員長

今大会の全体講評が、まつもと審査委員長より行われました。ゲーム部門の作品については、「どれも、懐かしさを感じる良い作品。審査員の多くが若かった頃、1980年代に見たり遊んだり作ったりしたゲームに近い感じを受けた。レトロリバイバルが来ているのか、若い人たちの感性が近くなっているのか判断はつかないですが、どれも当時の懐かしさと楽しさを思い起こすことができ、とても良い作品ばかりだったと思います。どの作品も、どこに出しても恥ずかしくない成果だと思えるので、ぜひ、中高生国際Rubyプログラミングコンテストで最終審査会に出た作品だと自慢してください」と、おっしゃってくださいました。
続いて、クリエイティブ部門については、「どれも本当に優劣の付けがたい優れた作品でした。Webアプリケーションと脳波の測定をどう比べようかと難しい審査でもありましたが、どれも着眼点が良い作品でした。Nucumo(ヌクモ)の二人の「Minory」は最優秀賞に選ばれましたが、プロ顔負けの作品で、世に出ているプロの作品でもここまでできていないものがあると、審査員からもどよめきが起こるほどでした。また、何 櫟さんの「Bluetoothをつかった脳波の測定とリアルタイム表示や保存」は、Bluetoothを使うということに果敢に挑戦された作品で、論文も出されていると知り、自分が高校生の時のことを思うと若い才能の素晴らしさを強く感じました。石川さんの「My Design Memo」は、自分の欲しいもの作りたいものをコンセプトから作っていくことに共感を覚えました。独りで作りあげた点を評価して、Matz賞を差し上げることにしました」と、それぞれの作品を称えられました。
最後に「ゲーム部門も、クリエイティブ部門も、今年も素晴らしい作品ばかりだったと思います。若さが力になると思いますが、この先大人になっても情熱を持ち続けてほしいと思いました。情熱がモチベーションの基になり、モチベーションこそが世界を変えられると思います。ぜひ、その情熱をプログラミングやRubyに向け続けてくれればいいなと思います。その願いを総評の言葉と変えさせていただきます」と、将来への期待を込めた講評となりました。


【奨励賞】

一次審査通過には至らないものの、今後の活躍が期待できる作品を作られた山田 直生(なおき)さんに、当コンテスト実行委員会から奨励賞が贈られました。


閉会式

副実行委員長の吉田 純夫より閉会の挨拶があり、応募者をはじめ、協賛いただいた企業、運営に携わった実行委員へ感謝の意を表し、初のオンライン開催となった第10回目のプログラミングコンテストは無事に閉会しました。


文:山田 浩之(株式会社ヴィブラント)